スキルではなく、マインドセットを。机上で考えるトップセールスの育成論

少し前、ある企業の代表から営業パーソンに関する話を聞いた。

「フェラーリを売っていた人がカローラを売るのは簡単だが、カローラを売っていた人がフェラーリを売るのは難しい。同様に、高単価な新卒採用媒体を売っていた人が、低単価な派遣・アルバイト媒体を売るのは簡単だが、逆は難しい」といった話だ。

つまり、営業スキル以上に”お客さんにとってお得なモノを売っている”というマインドセットを持てるかどうかが大切だ——という話だと思う。

これを聞いて同時に考えたのが、ヒアリングやプレゼン、交渉力といったいわゆる「営業スキル」よりも、「マインドセット」を育てた方が、結果的に優秀な営業パーソンを育てられるのではないかという仮説だ。

「とにかく、1機を落とすこと」

ドイツにおけるパイロット育成でも近しい話がある。ドイツ空軍の撃墜王だったメルダース氏は「若いパイロットが育つためにどうすればいいか」という問いに以下のように答えたそうだ。(引用元:http://www.webchikuma.jp/articles/-/664

怖い目に遭うよりも先に、とにかく1機を落とすこと

最初の1機を落とすことができたパイロットは、その後、どんどん伸びていくという。これもパイロットとしての才能やスキル以前に、成功体験を通し”自分はできる”というマインドセットを持てるかが、その後の成果に大きく影響することを物語っている。

よい営業パーソンが採用できない/育たないという悩みはよく聞くが、マインドセットを育てる方法論を確立できれば、優秀な営業パーソンを作り出すことができるかも知れない。

続けて、その方法論を想像してみよう。

成功体験がマインドセットを育む

まず思いつくのは、パイロットと同様に、最初の営業先で成功体験を積んでもらうことだろう。

いわゆる『獅子はわが子を千尋の谷に落とす』的な育成方法ではない。エース級の先輩社員が細かくフィードバックしながら、契約締結までをサポートし、兎にも角にも「受注」を体験させる。

前述の記事には、「最初の1機を落とす前に怖い思いをしてしまったパイロットは、飛行機に乗ることが怖くなって、ついに降りるしかなくなる」とあるが、僕自身最初の営業でつまづき、結果的には営業をやめマーケターになった人間。笑 ゆえにこの手法は比較的有効なのではないかと思っている。

他にも、商材に対して成功体験をもつことも効果がありそう。

おそらく、SNSマーケ関連のサービスを一番売れるのはインフルエンサーであり、投資信託を一番売れるのは、投資信託で素晴らしい運用益を出した経験のある人だろう。

商材に対し自身が成功体験を持っていれば、自信を持ってお客さんに勧めることができる。すると、自然と営業力も増してくる。Salesforceの営業パーソンに優秀な人が多いのは、自身が自社の商材で日々成功体験を積んでいるからではないだろうか。

逆に、商材の良さを体験できていない場合、自信を持って勧められず成果を出しづらいかもしれない。

マインドセットがスキルを生む

もちろん他にも良い方法はあると思う。もっと小手先でできる方法論で言えば以下も考えられる。

・営業ではなくコンシェルジュ的な役職名にする
・チームのリーダーにする
・表彰する
・所属組織のブランド力を上げる
・高給を渡す
・メディア露出させる
・心酔できる企業や製品のストーリーを作る

これらも、多かれ少なかれマインドセットへ影響を与えられそう。

いずれにしても、営業研修や細かな行動管理といった技術ではなく、マインドセットに働きかけることで優秀な営業パーソンを育てることができそうな気がしている。

ただ、マインドセットがあればスキルは不要ではなく、「マインドセットを育くめば、スキルが後から付いてきて、結果的に優秀な営業パーソンになる」というのが、実は正解な気がする。

顧客が力を持つ時代に営業が担うべき役割とは

2012年、「The End of Solution Sales」(ソリューション営業は終わった)という衝撃的なタイトルの論文がHarvard Business Reviewに掲載された。

論文には以下のように記されている。

“The hardest thing about B2B selling today is that customers don’t need you the way they used to.”(※you=営業担当者)

つまり、“インターネットの普及により、顧客が自ら課題の設定や情報収集、業者選定を行えるようになったことで、「営業」という職種のあり方が変わっていく”ことを示唆している。

あれから、5年以上。購買行動の主導権はますます顧客が握るようになっている。

マーケティングとテクノロジーが営業の役割を奪う

今時、企業がなんらかのツールやサービスを導入しようと思った時、Webで大体の情報は調べられる。セミナーやイベントに参加すれば、先進企業の取り組みやキーポイントを知ることも難しくない。

かつて営業職が担っていた役割を、マーケティングとテクノロジーがものすごい勢いで飲み込み始めているといえる。

表にするとこんなイメージ。

この状況を予期していた企業は、顧客自らが情報収集、業者選定、意思決定をできるよう、料金表や競合比較、活用方法の提案、懸念事項への回答等を、すでにWeb上で発信している。

商談日程の調整も、オンライン予約システム上で行う企業(SmartHRやRakSulのハコベルなど)も現れ、Webだけで申し込みまで完結できるサービスも増えている。支払いはクレジットカード決済か、月末に自動で請求書がPDFで送付されるものが多い。

こうなると、営業を持たない会社も増えていくのではないだろか。

営業職ゼロで400億円を売り上げる、オーストラリアのソフトウェア企業『Atlassian』のCEO スコット・ファークァー氏は「できるだけ多くのソフト開発者にリーチするには、営業マンが1人1人電話をかけていては間に合わない」とインタビューで語っている。

高度化する営業スキル、求められる人材

この状況下で、営業パーソンの役割として残りそうなものを考えると、ぱっと4つほど思いあたる。

・顧客すら気付いていないインサイトを見つける力
・顧客の要望を、自社と顧客の双方にとって適切な要件に落とし込む力
・外部ツールやパートナーを組み合わせて、最適な提案をするプロデュース力
・話して楽しいといった情緒的な面

上記はいずれも、専門的なスキルや自社に対する深い理解、人的ネットワークが必要になり、高度人材で無ければ成し遂げることが難しいだろう。

時々「いい営業が取れない」「営業が育たない」という話を聞くが、そもそも現代の営業に必要なスキルが高度化しているのではないだろうか。もちろん、高度なスキルを持つ営業パーソンにとっては、これまで以上に活躍できる時代が到来したといえる。

あくまで机上の議論ではあるが、「営業攻勢をかけるために、薄給の営業を大量採用する」より「マーケティングとテクノロジーに投資し、高度人材の営業をごく少数、高給で雇う」方が、今後合理的な戦術になっていく気がする。

トップクラスのセールスパーソンにとっては、何を今更な話かもしれないが、そんなことを考えてみた。

※編集に協力してくれた小山和之に感謝します

なぜ、採用サイト/ページは社員インタビューで溢れているのか

最近、知り合いと「ほとんどの会社の採用サイト/ページが、差別化できていない」という話をした。

社内の環境や制度、代表メッセージ、社員の年齢・性別などのデータ、活躍している社員のインタビュー。どの会社もみな同じようなものが並んでいる。雑談的に「どうすれば良いんだろうねー」と話していたが、掲載する情報の質を変えると面白いのではと思った。

僕が転職者なら教えて欲しいこと

仮に僕が転職する立場だったら、現状の採用サイトや求人サイト、転職口コミサイトの情報だけでは、会社のことがわからず、転職に踏み切れないと思う。

企業の採用サイトや求人情報サイトには、よく社員のインタビューが載っている。ただ、彼らには良いことを言わなきゃ・・という力学が働くので、どうしても宣伝臭くなってしまう。そもそも、いま所属している社員の声だけだと生存バイアスが働いてしまうので

・内定は貰ったが、他社を選んだ人の声
・最近、辞めた社員の声
・一緒に働くお客さんやパートナーからの声

まで載せてもらった上で意思決定できると嬉しい。少なくとも、提供しているサービスの満足度や継続率、加えて社員の離職率は教えてもらえるとありがたい。

※ちなみに転職口コミサイトは、Amazonのレビューのように不満を感じている人が書き込みやすいため、参考にしづらいと思っている。

ホントのところに触れる機会が欲しい

できるだけ、ホントの情報に触れる機会があると良い。

会社の近くの飲み屋で交わされているような「実は●●の理由で転職しようと思っている」「新しくできた●●という社内制度がとてもありがたい」といった会話や、社内チャットの雑談部屋で繰り広げられる会話など。
(この会話をした人は『入社前にChatworkの雑談部屋に入ってもらってる』と言っていた。すごい…!)

その会社にフィットできるかを確かめるために、入社前には、配属先の部署のチャットに入り、会話に加わる期間があっても良いかもしれない。全社総会に呼んでもらうというのも一つの手段だろう。

もちろん、秘密保持的な話があるのは重々承知の上で、求職者視点で欲しい情報を考えてみる余地はまだまだありそうだ。

テクノロジーがフラットな情報を流通させる

ちなみにマーケティングで近しいことを考えてみると、導入事例が例に挙げやすい。導入事例は、導入した100社のうち、5社が満足・95社が不満足でも、満足した5社を取り上げれば良いサービスに見えてしまう。

これも生存バイアスが強くかかってしまう例。誠実に情報発信するのであれば、プロジェクトの成功率と、不満足な会社の事例も載せた方が良いとなるけど、普通に考えればそんなことをする企業はないw

導入事例の話も、採用サイトの話も、性善説では解決されないと思うので、いつの日かテクノロジーが解決策を提供してくれることを期待している。

※編集に協力してくれた小山和之に感謝します

Indeedから考える、顧客の論理を優先するBtoBマーケティング

最近、身の回りでIndeedを使っている人の話を聞く機会が増えている。

Indeedは求人情報を一括で検索できるサービス。マイナビやタウンワーク等の求人情報サイト、企業の採用ページなどに掲載された求人情報を一括で検索できる。求人情報に特化したGoogleというとわかりやすいだろう。

世界最大の掲載求人数を誇り、ビジネスモデル上、SEOが驚異的に強い(そのあたりはこの解説が参考になる)。ただIndeedについて特筆すべきは、ユーザーにとっての利便性の高さだろう。

圧倒的にユーザー視点で便利な『Indeed』

一般的な求人サイトは会員登録しなければ詳細情報が見れないものが多い。登録しても、自分に合う企業が、登録したサイトに求人情報を掲載しているとは限らない。そのため複数のサイトに登録して、複数の場所で情報を探す手間が発生する。

求人サイトへ掲載していない企業に至っては、名前を知らない限りは接触機会さえ持つことができない。

一方、Indeedは会員登録も不要で、さまざまな求人サイトに掲載されている求人情報を一括で検索できる。

ユーザーは、求人サイトを探し、登録、巡回する手間が省け、1カ所で全てを済ませられるという、圧倒的な利便性を享受することができるのだ。

インターネットの登場により、個人が力を手にした。今後も、個の力は増す一方なので、あらゆる領域において、サービス提供者側の論理ではなく、受益者側の論理で一番だと思われるものが選ばれる時代になっている。

つまり、企業の論理ではなく、顧客の論理こそが最優先される時代。この文脈において、Indeedは顧客の論理で設計された素晴らしいサービスだと思う。

BtoBマーケティングも、企業の論理ではなく顧客の論理へ

翻って、我が専門のBtoBマーケティングを見てみると、まだまだ企業の論理が強く残っている。

企業のWebサイトに価格が載っていることは稀で、カタログやホワイトペーパーをダウンロードしようとすると個人情報の入力が求められる。デジタルマーケティングに関するメディアは記事を読むのに会員登録が必要なことが多いし、展示会やイベントに参加すると、名刺の献上も当たり前だ。

これらは、企業が情報を握っていた時代の名残だろう。しかし、顧客側にメリットがないやり方は今後、時代遅れになっていくのではないだろうか——。

このご時世、検索して出てこない情報は、それほど多くはない。個人情報を入力し、インサイドセールスから電話がかかってくる手間を負担してまで、情報を取得しようとする顧客は少なくなっていくだろう。

もちろんビジネス上の都合で、個人情報の取得が必要なのは理解できる。ただ、それが生き残るための原資になっている企業は、Indeedのような次世代のサービスが出てきたときに、一気に乗り換えられる可能性を内包していると思う。

顧客中心のBtoBマーケティングへ

ユーザーにとって利便性の高い場所に人が集まる。これは世の常だ。

Indeedのように顧客の論理でBtoB企業のサイトを設計するなら、個人情報を獲得して顧客を囲い込む発想を捨て、とにかく情報をオープンにし、価格も明示し、ホワイトペーパーも自由にダウンロードさせた方が良い。競合との比較情報も、できる限りフラットに載せておくと良いだろう。

例えば、当社も依頼しているAZX総合法律事務所では、契約書類の雛形をWebサイト上にアップし、個人情報の登録も必要なく、自由にアクセスできるようにしている。顧問として関わりのある企業か否かに関わらず、本来有料で作成してもらうような書類を活用できるのだ。

当社も現在コーポレートサイトのリニューアルを進めているけれども、従来のBtoBマーケティングで大切だとされてきた、リード獲得/育成のフレームワークを全く参考にしないサイトを作りたいと考えている。PVやリード獲得数などのKPIは企業側の論理なので、顧客にとって何が利便性が高いかを徹底的に考え、自分たちのマーケティングを設計していきたい。

※編集に協力してくれた小山和之に感謝します

成果の出てる会社にいったい何があるというんですか?

最近とある打ち合わせで、どんな企業がBtoBマーケティングで成果が上げているのか、どんな施策がうまくいってるのか、どんなマーケティングシナリオを組めば良いのか、などを矢継ぎ早に質問されたことがあった。

その時は具体例でいろいろ回答していたのだけど、抽象化して考えると、成果を出せている会社の特徴は『ちゃんと物事が進んでるか』に尽きる気がしたので、その理由を書いてみる。

マーケティング活動の成果が出てない会社の特徴

これまで、実際にプロジェクト化した会社だけでも50社以上、プロジェクト化せずに相談だけも含めると数百社のBtoBマーケティングの現場を見聞きしてきたけど、マーケティングに苦戦している(=成果を出したいと思っているが、成果が出ていない)会社の傾向ははっきりしていて、

  • 目標を決められていない
  • 基本的な数字を把握できていない
    (Google Analyticsや問い合わせ数、商談後受注率など)
  • 施策を検討したり、進捗確認をしたり、振り返りをする定例会を持てていない
  • 「○○をやりたい」が積み重なっていて、施策が実行できていない

という感じ。よく業界の人が『ツールを導入しても運用に乗らない。日本にはマーケターが足りない!』と言ってるけど、もっとそもそものところで悩まれている印象だった。

マーケティング活動の成果が出ている会社の特徴

逆に、成果が出ている会社の特徴はシンプルで

・目標を決められている
・基本的な数字が把握できている
・施策を検討したり、進捗確認をしたり、振り返りをする定例会を持てている
・「○○をやりたい」が出てきた時に施策が実行できている
(ノウハウやリソースが足りない場合は、対策を考え、やる/やらないの意思決定をしている)

という感じ。天才的なマーケターやデザイナーがいて、彼らの天才的なアイデアのもとに、スーパースターな実行者がいて、成果を出していたのではおそらくなさそうだった。

基本的な理屈は、貯蓄やダイエットと同じでは

お金を貯めるコツは収入以下の支出で暮らすことだし、痩せるコツは食べすぎないことと運動すること。

巻くだけダイエットや豆乳ダイエット、骨盤ダイエットなどの流行のダイエット手法に精通しているかよりも、『毎日ちゃんと体重計に乗っていること』の方が決定的に大切で、一言で言うと『規則正しく生活しましょう!』に尽きると思う。

マーケティングも一緒で、最新のテクノロジーや概念(Account Based Marketingとかインフルエンサーマーケティングとか)に精通するから成果が出るのではなく、日々ちゃんとプロジェクトが進んでいるから成果が出るのだと思う。

ちゃんと物事が進んでいれば、たまたまナイスアイデアを思いつくかもしれないし、思わぬ社会トレンドに乗れるかもしれないし、偶然のチカラを借りて、施策が大ヒットしちゃうかもしれない。

まずもって、『目標を決めて、基本的な数字を定期的に把握し、みんなで知恵を出し合って日々試行錯誤する』ことは、マーケティング活動で成果を出すために何よりも大切な要件ではないだろうか。最近はそのあたりを意識しながらプロジェクトに関わらせてもらっている。

そんな当社も採用が一向に進んでない課題があったんだけど、なぜなら、適当な目標しか立ててないし、実行してないし、振り返りなんて尚の事してないからだと気づいた(笑)

このブログの運営も適当だったので、もう少しちゃんと運営したいと思って、まずはGoogle Analyticsの数字が定期的にSlackに飛ぶように設定してみたw

BtoB企業における、外部CMO・マーケティングマネージャーという選択肢

『プロダクトには自信があるんだけど、マーケが弱くて・・』

そんなご相談をいただき、いくつかのBtoBベンチャー・スタートアップの外部CMO・マーケティングマネージャー的な立ち位置をさせてもらっている。

やりながら気づいたのは、社内にノウハウがない時の解決策として、外部CFOや外部CTO/技術顧問はよく聞くけど、「外部CMO」ってあまり聞いたことがない(ちょうど先日、「資生堂から独立 CMOのシェアリングサービス開始」といったニュースが出ていたけど)。しかしながら、この役割は事業を伸ばすために有効だと思ったので、専門領域であるBtoBに絞って、「なぜ、外部CMO・マーケティングマネージャーが必要なのか」を書いてみた。

マーケティングリソースを割けないBtoB企業

BtoBのベンチャー・スタートアップ企業でマーケティングリソースが豊富なことはほとんどない。多くの企業は、開発か営業の人員を手厚く採用するので、マーケティングは営業が兼務していたり、社内の何でも屋さん的な人が広報を含めやっているケースが多い。

結果として、顧客開拓の施策はテレアポとリスティング広告と年に数回の展示会のみ。メディアでよく見かけるMA(Marketing Automation)やコンテンツマーケティングに取り組もうとしても、リソースが足りず、運用に乗らない。とかがよくあるパターン。

一方、顧客の情報行動・購買行動は明らかに変化している

そんな企業側の都合とは関係なく、Corporate Executive Boardの「BtoB市場において、顧客は業者と初めて接触する時点で、購買プロセスの57%を既に終えている」などの調査を持ち出すまでもなく、いまや情報行動・購買行動の主導権は顧客が握っている。

マーケティングの世界では、“Self-Educating Buyers”なんて言うけど、今の時代、顧客自らが、PCやスマホで情報を調べたり、信頼できる第三者におすすめを聞いたりして、どの製品・サービスを導入するかを決めている。営業や社内の何でも屋さん的な人が、片手間にマーケティング業務をしている企業の製品・サービスは、当然、顧客の検討プロセスに入りづらく、機会損失は避けられない。

提供されるサービスのドーナツ化現象と中心を担う外部CMO

そこで、「マーケターを採用しよう!」、「外注パートナーを探そう!」と思っても、次なる障壁が登場する。

転職市場を見たときに、そもそもBtoBマーケティングの経験者が少ないし、ほとんどのマーケターはtoCのサービスに行きがち。クックパッドやコカ・コーラ、ディズニーのマーケをやりたい人はたくさんいても、勤怠管理システムや給与計算ソフトのマーケをやりたい人は少ないだろう(個人的には、断然、後者をやりたいけどw)。

また、外部の業者に発注しようにも、世の中に流通している製品・サービスはこんな状態になっている。

勝手に「提供されるサービスのドーナツ化現象」と呼んでるけど、広告代理店から調査会社、SEOやコンテンツマーケ業者、MAや解析系のツールベンダーなど、ドーナツの外側を提供してくれる会社は世の中にたくさんある。

しかしながら、お菓子のドーナツと違って、ビジネスの世界では真ん中も大切。ドーナツの真ん中にいて、戦略立案から社内の体制作り、ベンダー選定、日々のPDCA推進まで、パワフルに実行できる存在がいるかどうかで出せる成果は大きく変わる。そんな人材がプロジェクト内にいれば、高度化・多様化するサービスやツールのポテンシャルを引き出しながら、成果を最大化できるだろう。

マーケティング活動におけるすべての役割を社外の人がやれるとは思わないけど、社外CFO、社外CTO的に、一部の役割を外部に求めることはできるし、外部の優秀な人材にアクセスしやすくなっている現代、一つの有効な選択肢だと思う。

そして、冒頭に『プロダクトには自信があるんだけど、マーケが弱くて・・』と書いたけど、世の中にはすごい製品・サービスがたくさんあって、それらを作っている人たちとの仕事は、脳に刺激をもらえて楽しい。外部CMO・マーケティングマネージャーとして活動する側としても、自分が良いと思う製品・サービスを拡めながら、楽しく仕事がしたいニーズは結構あると思うので、今後、一般的な役割になるんじゃないかと予想している。

当社で一緒に働いていただける方を募集しています。

不幸せにはならない職場

いま会社で採用を進めていて、人生の5~10%を投下してもらうわけなので、責任重大というか、できる限り最高の環境を作りたいなーといろいろと考えていたのだけど、良い環境や職場って、出現確率がとても低いし、定義が人それぞれで、目標として捉え所がないなーと悩んでいた。

そんな時、ナシーム・ニコラス・タレブの『ブラック・スワンの箴言』を読んでいて、こんな一節に出会った。

幸せについて:私たちは何が幸せかわからないし、どうやって幸せを測ればいいかわからないし、どうすれば幸せに手が届くかもわからない。でも私たちは、どうすれば不幸せを避けられるかとてもよく知っている。

たしかに、自分自身も幸せかどうかはわからないしw、どうすればもっと幸せになるのかもわからないけど、不幸せでないことは確か。
自分の周りも、心から幸せそうな人も珍しいけどw、不幸そうな人もほとんどいなくて、みんなそれぞれにやりくりしながら、前に進んでるなぁーという印象。タレブが言うように、幸せを目指すことは難しいけど、不幸せを避けることは簡単かもしれない。

翻って、経営者として、最高の環境・幸せな職場を作ろうとする前に、最低限、不幸せにしないことが大切そうで、それはいますぐに実行できるのではと思った。

そこで、『私たちは、どうすれば不幸せを避けられるかとてもよく知っている。』前提に立ち、自分がいまどこかの会社に転職するという仮定で、こんな基準で職場を選べば不幸せを避けられそうだな、という点をまとめてみた。

1.仕事に意義を見いだせるか

目的や意味を感じられれば、毎日、前向きに出社できる。一方、仕事に意義を見い出せないのであれば、速攻で疲弊しそうw

2.生活がカツカツにならない給与が出るか

旅行に行ける、飲み会に行ける、適度に買い物ができる、将来への貯蓄ができる。最低限そこは死守したい。

3.長期間、長時間働くことがないか

短期間、長時間働くのは文化祭みたいで楽しいけど、長期間、長時間働くとQOLが下がってしまう。遊びにも行きづらく、家族・友人関係にも悪影響が出るだろう。バランスの良い労働時間で、オプショナルに長時間働くことを選べるのが最高。

4.休みたい時に休みが取れるか

友だちに旅行に誘われた、親友の結婚式、年に1度の結婚記念日(結婚してないけど)。そんな時に、スムーズに休みが取れないとストレスが溜まりそう。

5.社内コミュニケーションが多いか

喋る量が少ないと、ウサギじゃなくても、普通に寂しくなる。職場の仲間同士、適切にコミュニケーションが交わされている会社や部署を選びたい。

6.怒鳴る、ツメる文化ではないか

極度のM気質でない限り、怒鳴られたり、ツメられたりして楽しい人はいない。人間、常に完璧にはいられないから、なるべく穏やかな人たちに囲まれていたい。

7.事業が右肩上がりか

停滞している事業はチーム内の雰囲気が暗くなりがち。多少忙しくても、右肩上がりの場所に身を置いた方が前向きに過ごせるだろう。

8.満員電車に長時間揺られなくても通えるか

トータル2年ぐらい、満員電車で1時間弱の通勤をしたことがあったけど、あれは普通にキツかった。。

並べて見てみると、これら(たった8個!)が守られていれば、心から幸せになれるかはわからないけど、まぁ楽しくはやっていけそう。逆に、これらが守られてないと長くは続かないのかもしれない。

書きながら、「最低限不幸せにしない × 自分たち独自の楽しい状態を作れるように試行錯誤する」が、最高の職場を作るカギな気がしたので、「最低限不幸せにしない」を死守しながら、いろいろ僕ららしい打ち手も考えていきたい。

悪いこと言わないから、サイトリニューアルなんて始めるべきではありません

マーケティング支援をしていると時々「Webサイトをリニューアルしたいんですが、どうすれば良いですか?」という相談をもらう。

ほとんどの場合、「リニューアルしない方が良さそうですね」と回答していたけど、最近、その理由が整理できたので書いてみる。 “悪いこと言わないから、サイトリニューアルなんて始めるべきではありません” の続きを読む

君に営業資料はいらない

世の中の営業資料ほど、読んでてつまらない読み物、聞いててつまらないプレゼンはない。売上が○○億円で、従業員数が○○人いて、お陰様で設立○年の会社です。こんな事業を展開していて、うんぬんかんぬん。

これを説明していて、楽しいと思ってる人はどれくらいいるのだろうか? これを聞いていて、わくわくする人はどれくらいいるのだろうか? 十中八九、いや、十中九十の聴き手は「なるほど、なるほど。いいですね。」と言いながら、心の中では「早く終わらないかなー。」とつぶやいている。それなのに、日本ではこの瞬間も、1分あたり50個の営業資料が作られている(※1)。

例えば、『ブラック・スワン』や『反脆弱性』を書いたナシーム・ニコラス・タレブの本。大半の本が前半でコアなコンセプトを説明しきってしまい、後半は急激に眠くなっていくのに対して、彼の本はすべての章を部(ブック)と呼んでいるくらい、最後の最後まで飽きることがない。どの章を切り取っても、それぞれが最高に面白い。そんな、すべてのスライドが面白い営業資料は作れないだろうか?

例えば、村上春樹の小説。『1Q84』なんか特に、ここで終わるわけないよね?絶対、続編出るよね?!と思う終わり方をしながら、決して、続編は出ない。そんな、オーディエンスの気持ちを盛り上げるだけ盛り上げて、何も結論は示されない(けど、気になっちゃう)営業資料は作れないだろうか?

例えば、2006年の山本KID 対 宮田和幸の試合。間合いの測り合いやジャブで牽制し合うプロセスをすっ飛ばして、いきなり飛び膝蹴りでKOしちゃう。そんな、表紙もなく、一枚目からキラースライドを載せて、お客さんの心をノックアウトしてしまう営業資料を作れないだろうか?

ロジカル・プレゼンテーション』の影響なのか、ベンチャーキャピタリストがブログで公開している模範的な事業計画書の影響なのかわからないが、世の中には体裁だけ整えた、退屈な資料が溢れている。

そもそも、営業もマーケティングもOne to Oneこそが最高。体裁を整え、全員に同じことを伝えようとするマス的発想の営業資料は、One to Oneの思想からは程遠い。営業パーソン自身が説明してて楽しく、お客さんが聞いてて面白く、そこから本当のコミュニケーションが生まれる。そんな営業資料を作れたら、営業は黙っててもアポに行って、案件を取ってきてくれるだろう。自分たちのことを表現するスライドを作っていて、お客さんのセールスストーリー作りを支援していて、そんなことを思った。

※1:適当な数値だけど、もっと多かったりして(笑)