カローラを売っていた人が、フェラーリを売るのは難しい。トップセールスの育成論

少し前、ある企業の代表から営業パーソンに関する話を聞いた。

「フェラーリを売っていた人がカローラを売るのは簡単だが、カローラを売っていた人がフェラーリを売るのは難しい。同様に、高単価な新卒採用媒体を売っていた人が、低単価な派遣・アルバイト媒体を売るのは簡単だが、逆は難しい」といった話だ。

つまり、営業スキル以上に”お客さんにとってお得なモノを売っている”というマインドセットを持てるかどうかが大切だ——という話だと思う。

これを聞いて同時に考えたのが、ヒアリングやプレゼン、交渉力といったいわゆる「営業スキル」よりも、「マインドセット」を育てた方が、結果的に優秀な営業パーソンを育てられるのではないかという仮説だ。

「とにかく、1機を落とすこと」

ドイツにおけるパイロット育成でも近しい話がある。ドイツ空軍の撃墜王だったメルダース氏は「若いパイロットが育つためにどうすればいいか」という問いに以下のように答えたそうだ。(引用元:http://www.webchikuma.jp/articles/-/664

怖い目に遭うよりも先に、とにかく1機を落とすこと

最初の1機を落とすことができたパイロットは、その後、どんどん伸びていくという。これもパイロットとしての才能やスキル以前に、成功体験を通し”自分はできる”というマインドセットを持てるかが、その後の成果に大きく影響することを物語っている。

よい営業パーソンが採用できない/育たないという悩みはよく聞くが、マインドセットを育てる方法論を確立できれば、優秀な営業パーソンを作り出すことができるかも知れない。

続けて、その方法論を想像してみよう。

成功体験がマインドセットを育む

まず思いつくのは、パイロットと同様に、最初の営業先で成功体験を積んでもらうことだろう。

いわゆる『獅子はわが子を千尋の谷に落とす』的な育成方法ではない。エース級の先輩社員が細かくフィードバックしながら、契約締結までをサポートし、兎にも角にも「受注」を体験させる。

前述の記事には、「最初の1機を落とす前に怖い思いをしてしまったパイロットは、飛行機に乗ることが怖くなって、ついに降りるしかなくなる」とあるが、僕自身最初の営業でつまづき、結果的には営業をやめマーケターになった人間。笑 ゆえにこの手法は比較的有効なのではないかと思っている。

他にも、商材に対して成功体験をもつことも効果がありそう。

おそらく、SNSマーケ関連のサービスを一番売れるのはインフルエンサーであり、投資信託を一番売れるのは、投資信託で素晴らしい運用益を出した経験のある人だろう。

商材に対し自身が成功体験を持っていれば、自信を持ってお客さんに勧めることができる。すると、自然と営業力も増してくる。Salesforceの営業パーソンに優秀な人が多いのは、自身が自社の商材で日々成功体験を積んでいるからではないだろうか。

逆に、商材の良さを体験できていない場合、自信を持って勧められず成果を出しづらいかもしれない。

マインドセットがスキルを生む

もちろん他にも良い方法はあると思う。もっと小手先でできる方法論で言えば以下も考えられる。

・営業ではなくコンシェルジュ的な役職名にする
・チームのリーダーにする
・表彰する
・所属組織のブランド力を上げる
・高給を渡す
・メディア露出させる
・心酔できる企業や製品のストーリーを作る

これらも、多かれ少なかれマインドセットへ影響を与えられそう。

いずれにしても、営業研修や細かな行動管理といった技術ではなく、マインドセットに働きかけることで優秀な営業パーソンを育てることができそうな気がしている。

ただ、マインドセットがあればスキルは不要ではなく、「マインドセットを育くめば、スキルが後から付いてきて、結果的に優秀な営業パーソンになる」というのが、実は正解な気がする。

顧客が力を持つ時代に営業が担うべき役割とは

2012年、「The End of Solution Sales」(ソリューション営業は終わった)という衝撃的なタイトルの論文がHarvard Business Reviewに掲載された。

論文には以下のように記されている。

“The hardest thing about B2B selling today is that customers don’t need you the way they used to.”(※you=営業担当者)

つまり、“インターネットの普及により、顧客が自ら課題の設定や情報収集、業者選定を行えるようになったことで、「営業」という職種のあり方が変わっていく”ことを示唆している。

あれから、5年以上。購買行動の主導権はますます顧客が握るようになっている。

マーケティングとテクノロジーが営業の役割を奪う

今時、企業がなんらかのツールやサービスを導入しようと思った時、Webで大体の情報は調べられる。セミナーやイベントに参加すれば、先進企業の取り組みやキーポイントを知ることも難しくない。

かつて営業職が担っていた役割を、マーケティングとテクノロジーがものすごい勢いで飲み込み始めているといえる。

表にするとこんなイメージ。

この状況を予期していた企業は、顧客自らが情報収集、業者選定、意思決定をできるよう、料金表や競合比較、活用方法の提案、懸念事項への回答等を、すでにWeb上で発信している。

商談日程の調整も、オンライン予約システム上で行う企業(SmartHRやRakSulのハコベルなど)も現れ、Webだけで申し込みまで完結できるサービスも増えている。支払いはクレジットカード決済か、月末に自動で請求書がPDFで送付されるものが多い。

こうなると、営業を持たない会社も増えていくのではないだろか。

営業職ゼロで400億円を売り上げる、オーストラリアのソフトウェア企業『Atlassian』のCEO スコット・ファークァー氏は「できるだけ多くのソフト開発者にリーチするには、営業マンが1人1人電話をかけていては間に合わない」とインタビューで語っている。

高度化する営業スキル、求められる人材

この状況下で、営業パーソンの役割として残りそうなものを考えると、ぱっと4つほど思いあたる。

・顧客すら気付いていないインサイトを見つける力
・顧客の要望を、自社と顧客の双方にとって適切な要件に落とし込む力
・外部ツールやパートナーを組み合わせて、最適な提案をするプロデュース力
・話して楽しいといった情緒的な面

上記はいずれも、専門的なスキルや自社に対する深い理解、人的ネットワークが必要になり、高度人材で無ければ成し遂げることが難しいだろう。

時々「いい営業が取れない」「営業が育たない」という話を聞くが、そもそも現代の営業に必要なスキルが高度化しているのではないだろうか。もちろん、高度なスキルを持つ営業パーソンにとっては、これまで以上に活躍できる時代が到来したといえる。

あくまで机上の議論ではあるが、「営業攻勢をかけるために、薄給の営業を大量採用する」より「マーケティングとテクノロジーに投資し、高度人材の営業をごく少数、高給で雇う」方が、今後合理的な戦術になっていく気がする。

トップクラスのセールスパーソンにとっては、何を今更な話かもしれないが、そんなことを考えてみた。

※編集に協力してくれた小山和之に感謝します

成果の出てる会社にいったい何があるというんですか?

最近とある打ち合わせで、どんな企業がBtoBマーケティングで成果が上げているのか、どんな施策がうまくいってるのか、どんなマーケティングシナリオを組めば良いのか、などを矢継ぎ早に質問されたことがあった。

その時は具体例でいろいろ回答していたのだけど、抽象化して考えると、成果を出せている会社の特徴は『ちゃんと物事が進んでるか』に尽きる気がしたので、その理由を書いてみる。

マーケティング活動の成果が出てない会社の特徴

これまで、実際にプロジェクト化した会社だけでも50社以上、プロジェクト化せずに相談だけも含めると数百社のBtoBマーケティングの現場を見聞きしてきたけど、マーケティングに苦戦している(=成果を出したいと思っているが、成果が出ていない)会社の傾向ははっきりしていて、

  • 目標を決められていない
  • 基本的な数字を把握できていない
    (Google Analyticsや問い合わせ数、商談後受注率など)
  • 施策を検討したり、進捗確認をしたり、振り返りをする定例会を持てていない
  • 「○○をやりたい」が積み重なっていて、施策が実行できていない

という感じ。よく業界の人が『ツールを導入しても運用に乗らない。日本にはマーケターが足りない!』と言ってるけど、もっとそもそものところで悩まれている印象だった。

マーケティング活動の成果が出ている会社の特徴

逆に、成果が出ている会社の特徴はシンプルで

・目標を決められている
・基本的な数字が把握できている
・施策を検討したり、進捗確認をしたり、振り返りをする定例会を持てている
・「○○をやりたい」が出てきた時に施策が実行できている
(ノウハウやリソースが足りない場合は、対策を考え、やる/やらないの意思決定をしている)

という感じ。天才的なマーケターやデザイナーがいて、彼らの天才的なアイデアのもとに、スーパースターな実行者がいて、成果を出していたのではおそらくなさそうだった。

基本的な理屈は、貯蓄やダイエットと同じでは

お金を貯めるコツは収入以下の支出で暮らすことだし、痩せるコツは食べすぎないことと運動すること。

巻くだけダイエットや豆乳ダイエット、骨盤ダイエットなどの流行のダイエット手法に精通しているかよりも、『毎日ちゃんと体重計に乗っていること』の方が決定的に大切で、一言で言うと『規則正しく生活しましょう!』に尽きると思う。

マーケティングも一緒で、最新のテクノロジーや概念(Account Based Marketingとかインフルエンサーマーケティングとか)に精通するから成果が出るのではなく、日々ちゃんとプロジェクトが進んでいるから成果が出るのだと思う。

ちゃんと物事が進んでいれば、たまたまナイスアイデアを思いつくかもしれないし、思わぬ社会トレンドに乗れるかもしれないし、偶然のチカラを借りて、施策が大ヒットしちゃうかもしれない。

まずもって、『目標を決めて、基本的な数字を定期的に把握し、みんなで知恵を出し合って日々試行錯誤する』ことは、マーケティング活動で成果を出すために何よりも大切な要件ではないだろうか。最近はそのあたりを意識しながらプロジェクトに関わらせてもらっている。

そんな当社も採用が一向に進んでない課題があったんだけど、なぜなら、適当な目標しか立ててないし、実行してないし、振り返りなんて尚の事してないからだと気づいた(笑)

このブログの運営も適当だったので、もう少しちゃんと運営したいと思って、まずはGoogle Analyticsの数字が定期的にSlackに飛ぶように設定してみたw

不幸せにはならない職場

いま会社で採用を進めていて、人生の5~10%を投下してもらうわけなので、責任重大というか、できる限り最高の環境を作りたいなーといろいろと考えていたのだけど、良い環境や職場って、出現確率がとても低いし、定義が人それぞれで、目標として捉え所がないなーと悩んでいた。

そんな時、ナシーム・ニコラス・タレブの『ブラック・スワンの箴言』を読んでいて、こんな一節に出会った。

幸せについて:私たちは何が幸せかわからないし、どうやって幸せを測ればいいかわからないし、どうすれば幸せに手が届くかもわからない。でも私たちは、どうすれば不幸せを避けられるかとてもよく知っている。

たしかに、自分自身も幸せかどうかはわからないしw、どうすればもっと幸せになるのかもわからないけど、不幸せでないことは確か。
自分の周りも、心から幸せそうな人も珍しいけどw、不幸そうな人もほとんどいなくて、みんなそれぞれにやりくりしながら、前に進んでるなぁーという印象。タレブが言うように、幸せを目指すことは難しいけど、不幸せを避けることは簡単かもしれない。

翻って、経営者として、最高の環境・幸せな職場を作ろうとする前に、最低限、不幸せにしないことが大切そうで、それはいますぐに実行できるのではと思った。

そこで、『私たちは、どうすれば不幸せを避けられるかとてもよく知っている。』前提に立ち、自分がいまどこかの会社に転職するという仮定で、こんな基準で職場を選べば不幸せを避けられそうだな、という点をまとめてみた。

1.仕事に意義を見いだせるか

目的や意味を感じられれば、毎日、前向きに出社できる。一方、仕事に意義を見い出せないのであれば、速攻で疲弊しそうw

2.生活がカツカツにならない給与が出るか

旅行に行ける、飲み会に行ける、適度に買い物ができる、将来への貯蓄ができる。最低限そこは死守したい。

3.長期間、長時間働くことがないか

短期間、長時間働くのは文化祭みたいで楽しいけど、長期間、長時間働くとQOLが下がってしまう。遊びにも行きづらく、家族・友人関係にも悪影響が出るだろう。バランスの良い労働時間で、オプショナルに長時間働くことを選べるのが最高。

4.休みたい時に休みが取れるか

友だちに旅行に誘われた、親友の結婚式、年に1度の結婚記念日(結婚してないけど)。そんな時に、スムーズに休みが取れないとストレスが溜まりそう。

5.社内コミュニケーションが多いか

喋る量が少ないと、ウサギじゃなくても、普通に寂しくなる。職場の仲間同士、適切にコミュニケーションが交わされている会社や部署を選びたい。

6.怒鳴る、ツメる文化ではないか

極度のM気質でない限り、怒鳴られたり、ツメられたりして楽しい人はいない。人間、常に完璧にはいられないから、なるべく穏やかな人たちに囲まれていたい。

7.事業が右肩上がりか

停滞している事業はチーム内の雰囲気が暗くなりがち。多少忙しくても、右肩上がりの場所に身を置いた方が前向きに過ごせるだろう。

8.満員電車に長時間揺られなくても通えるか

トータル2年ぐらい、満員電車で1時間弱の通勤をしたことがあったけど、あれは普通にキツかった。。

並べて見てみると、これら(たった8個!)が守られていれば、心から幸せになれるかはわからないけど、まぁ楽しくはやっていけそう。逆に、これらが守られてないと長くは続かないのかもしれない。

書きながら、「最低限不幸せにしない × 自分たち独自の楽しい状態を作れるように試行錯誤する」が、最高の職場を作るカギな気がしたので、「最低限不幸せにしない」を死守しながら、いろいろ僕ららしい打ち手も考えていきたい。

悪いこと言わないから、サイトリニューアルなんて始めるべきではありません

マーケティング支援をしていると時々「Webサイトをリニューアルしたいんですが、どうすれば良いですか?」という相談をもらう。

ほとんどの場合、「リニューアルしない方が良さそうですね」と回答していたけど、最近、その理由が整理できたので書いてみる。 “悪いこと言わないから、サイトリニューアルなんて始めるべきではありません” の続きを読む

机上の営業論

先日サービスをリリースしたので、BtoBサービスだから営業が必要かなーと思って、週末に営業計画を立てていた。しかし、この『BtoBだから営業する』『売上を伸ばすために営業する』という当たり前の発想が、逆に事業の立ち上げスピードを落としかねないと感じたので備忘録がてら書いておく。 “机上の営業論” の続きを読む