偶然のチカラを借りて進歩する


自分で言うのもなんだけど、僕は整理整頓が得意だ。PCのデスクトップにファイルは一個もないし、作業をしていてファイルが見つからない、なんてこともない。家が散らかることなんて年に数日あるかどうかだ。

そんな僕が、なぜかカバンの中だけは片付けられず、10年近く苦しみ続けていた。財布、スマホ、PC、ケーブル、本が鞄の中で散乱し、会計の時に財布が見つからないわ、本がグチャグチャになるわ、なすすべもなく、鞄のカオスに呑み込まれていた。

しかし、先日、ついに解決策を見つけることができた。それがこれ。

要は、鞄の中にPCケースを入れるようにしただけなんだけど、これを思いつくのに10年近くかかった。しかも、普段使っているPCを修理に出すために、チームメンバーからMacBook Airを借りた際、貸してくれた人がPCと電源をケースに入れて渡してくれたのを見て、「鞄の中にケースを入れれば良いんだ!」と偶然、気づいただけ。

とても簡単な解決策で、栗原バカだなぁと思う人もいると思うけど、人間は意外と、このようなプロセスで進歩しているらしい。

今では当たり前のように使われている車輪付きのスーツケースも、普及したのは2000年頃。それまでの長い間、旅行者は重い鞄を必死で持ち上げ、各地を行き来していた。旅行者の中には、本当に頭の良い人たちがたくさんいたにも関わらず、旅行鞄の底に車輪を付ける、というアイデアを誰も思いつけなかったのだ。古代メソポタミア人が6000年も前に車輪を発明してくれていたのに。

一般的な認識とは真逆に、我々は、目標に向かって、線形的に進んでいくのが苦手な生き物だ。Startup Genomeのレポートによると「1回または2回の方向転換を経験したベンチャー企業は、そうでない企業と比べて、売上が2.5倍、ユーザー獲得率が3.6倍に増えている」らしい。

優れたビジョンや戦略の結果として語られる企業や個人の成功も、後づけで成功を語っているにすぎない。コカ・コーラはもともと医薬品、ティファニーは文房具店として営業を始め、ノキアは製紙会社として設立されている。

人や企業は、規則的に進化するのではなく、僕の鞄のように偶然のチカラを借りて進化する。事前の計画に固執する人たちは、偶然やランダム性の恩恵をキャッチし損ね、いつまでも重い旅行鞄を運ぶことになってしまうのだ。